春の風は図々しいので好きではない。
人の服の中に入り込んできて、素肌をさわさわと撫でてゆく。
なまぬるく、やわく、湿り気を帯びたその風に、すっかり全身をくるみこまれる頃、花が芽吹き、生き物が土の中から這い出てくる。
そして、私も所詮、ただのひとつの命だと知る。
超短編のことを語る
春の風は図々しいので好きではない。
人の服の中に入り込んできて、素肌をさわさわと撫でてゆく。
なまぬるく、やわく、湿り気を帯びたその風に、すっかり全身をくるみこまれる頃、花が芽吹き、生き物が土の中から這い出てくる。
そして、私も所詮、ただのひとつの命だと知る。