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超短編のことを語る

前髪に火がついた。
ライターもタバコも投げ捨て、一瞬で炎をはらいのける。火はすぐに消え、あとには焦げたにおいだけが残った。
炎の残像が焼きついた目に、封を開けたばかりのタバコの箱が映った。机の上から私を見ている。ぎこちなく破られた口から声が聞こえる。
ばーか。おまえにはまだはやいよ。
制服が焦げなくてよかった、と思いながら、床に転がるタバコとライターを拾い、箱と一緒に鍵つきの抽斗にしまった。
胸にあった空洞は、すっかり姿を消していた。少し笑う。
鋏を探さなくては。
伸ばしていた前髪を、切りそろえるのだ。少しは視界も開けるだろう。