「フク、サチ、お祝いよ!」
エミコがそんな風に言いますが、二匹は「お祝い」というものが何なのか、分かりません。
「フク、オイワイって何か、知ってる?」
「やあだサチ、そんなものも、知らないっていうの?」
「何よ、あんたは、知ってるっていうの?」
もちろん、フクさんも知りません。でもほら、彼女は大変、気位が高い猫なのです。
「あー、あれよ、あれ、すごく、すごーく、裏のやつ。」
そう言うと、おでこのぶちをかりかりと掻きました。こうなるとサチさんも負けていられません。ほら彼女だって、大変、気位が高いのです。
「あー、あー、あれね。はっきり言って、早いやつ。」
「うしろから、長いやつ。」
「まんなかに、匂うやつ。」
西 加奈子「しずく」より
勝手に引用のことを語る