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勝手に引用のことを語る

 長寿番組の「笑っていいとも!」が終わってしまった。出演者は、いつも楽しげで、どこまでも明るい気楽な番組だった。そう思っていたのに、最終回やグランドフィナーレを見て驚いた。そこに出ている人たちが、日々不安を抱え、つらいときも笑わねばならなかったことを告白したからだ。
 私たちは脚本家というテレビの裏方の仕事をしているので、この感じはリアルにわかる。テレビの中の人は、のんきそうに見えるかもしれないが、けっこう過酷な日常を生きているのだ。生身の人間でありながら、常に明るく美しく見られなければいけないというカセは、人をおかしくする。そんなのは不自然だからだ。
 私たちの細胞は、子どもを残す任務を終えたら、後は朽ちてゆくようにできている。そんな自然の摂理を全く無視して、テレビは何十年も、ただひたすら明るく美しいものだけを人に見せ続けてきたのである。
(神戸新聞 2014年4月6日 木皿泉「木皿食堂」第36回より)