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勝手に引用のことを語る

 私のダンナは介護が必要で、それは悪くなることはあっても、良くなることはない。ふだんは忘れているが、そんなことをときどき思い出し不安になる。ケアマネージャーに、私たちどうなるんでしょうね、と相談すると、彼女は「それなりになんとかなるもんです」ときっぱりと断言する。それを聞くと、別に何かが変わったわけではないのに、私たちはほっとするから不思議だ。気休めだけで生きて行けるほど、人生は甘くないのは知っている。でも、自己責任ばかり言われ続けている私たちは、ときどき自分より大きなものに大丈夫と言ってもらいたくなる。
(木皿泉 2016年11月6日神戸新聞「木皿食堂」より)