id:usaurara
「ハコニワ」―画像とテキストの組み合わせによる創作―のことを語る

 
北の山に住むこうさぎは、大きな池のほとりの穴に
ひとりぼっちで住んでいました。
池のむこうを知りません。
池はこうさぎにはあんまり大きかったのですから。
 
ところが今年はきびしい寒さで、木の葉がすっかり落ちた頃から、
ちろちろ白い固まりが雨降るようにおちる日がありました。
そのうち、こんどは水面がきらきらと硝子のようにかたくなり
とうとう一枚の大きな鏡になったのです。
 
こうさぎは「池はあぶないよ」というおかあさんのいいつけを思い出して
がまんをしましたが、3日めにはとうとう鏡の上に立っておりました。
おそるおそる歩いてゆきますと向こう岸の木立にちろちろ光が見えるのです。
ゆき雲のおおう空が暗さを増すにつれ、それは一段とはっきりかがやいて
心細くなるこうさぎをはげましているようにさえ思えるのでした。
やっとの思いで岸にたどりつくと、黒々とした山を背に
灯台のように光を放つ木を見上げてこうさぎはいいました。
 
「あなたはだあれ」
 

 
http://hakoniwa.g.hatena.ne.jp/usaurara/20090108