------ 紙ロケット -----
等間隔のパイプと日差しが迷いの無いコントラストを作る場所で、
ここにいない水鳥の羽毛、目に見えない排気の粒子、あるはずのない煙草カスなんかが
絡み合い、ひとつの繭を作っている。
屋上とはそんな場所だ。
風の息遣いだけが渡るコンクリの上で繭が高く持ち上がっては地面に落下するのを、
私たちもまたひとつの繭のようにカーディガンを分け合いながら眺めていた。
風はそれをさらおうと試みてしばらく吹いてみたものの叶わずに、
かわりにお日様に薄くかかっていた雲を追い払ってから、ふっと止んだ。
フリーズした動画の画面を見つめるような気まずさがじわじわと照らし出される。
と、Kが凪いだ空にくわえ煙草を突き出して小さく言った。
「点火!」
行く宛てもわからない、どこへも届かないことだけが確かな紙ロケットに火が点く。
終了の鐘に怯える無力を、何気ないKの仕草にさえ映してしまう自分がたまらなくなって
私はカーディガンから抜け出した。
「寒いから、先行くよ。」
途端に吹き始めた風に階段を追われながら、私は季節の終わりを諦めることだけに精一杯だったのだ。
http://hakoniwa.g.hatena.ne.jp/usaurara/20081123#1227418475
「ハコニワ」―画像とテキストの組み合わせによる創作―のことを語る