- ----- オーガンジー ----------
「尾のうんと長いのがいいわ。」
透明なオーガンジーのふうわりをみながらKは言う。
薄暗い店に並ぶ小魚たちの中で、その水槽だけが
他とまったく別の時間を刻んでいた。
「うん、そうね。」
私は、水槽に映る影を睨みながら抑揚のない声で答える。
私は。
きんきんと水槽のはじからはじへとターンを繰り返す群れの
ありふれた一匹だ、悲しいけれど。
でもね、「美しいものが好き」ってあんたの言葉に、
これ以上はないくらい傷ついてきたから、、、もう私は平気なのよ。
だから言ってあげる。
透明な肌も、唇の赤さも、うんと長い睫毛も
金魚よりあんたのほうがずっとずっと綺麗だって。
http://hakoniwa.g.hatena.ne.jp/usaurara/20081004