「緑の三角」(1)
https://sites.google.com/site/usaginomurmure/murmure/090821_011.mp3
その頃、世界にはまだ色が少なくて小さな穴からあふれ出る色の洪水は、少女には夢のようでした。
畳の上でおはじきにしてひとしきり楽しんだ後、
少女は筒を握り締めかしゃかしゃと鳴らしながらブロック塀の向こうに遊びにゆきました。
「ぽんっ」「しゅーっ」「かしゃかしゃ」「ぽんっ」・・・・・・
繰り返すうち蓋を開ける「ぽんっ」が鳴らなくなったかな、と思うや、少女の手から七色の玉は飛び出して、
原っぱのそこここに噴水のような弧を描いて散らばっていきました。
夏草は少女にとって絶望的な高さで揺れていて、しばらく探してはみたものの数粒しかチョコは見つかりません。
「お母さんの言いつけを守らなかったからだ。お外に持ってきたからだ。」
少女はきゅっとくちびるを噛み、あざみと昼顔のピンクをみていました。
そのとき。目の前を緑の三角が横切ったのです。
見慣れないそれを確かめに近づいてみると、なんと大きなかたつむりです。
ところがかたつむりは少女を見るや友達のように「やあ、何泣いてるんだい?」と尋ねました。
「どうしてわかるの?私、泣いてないのに。」「わかるさ~。」
かたつむりは大きく伸びた二本の棒をくねらせます。
棒の先端には木琴のばちのように丸いものが青く光っていました。
「この色は今、きみを映してんのさ。
それで何故悲しいんだい?」少女がわけを話すとかたつむりは言いました。
「なるほどね・・・・」「だったらぼくが君のためになれるか試してみよう。みてて。」
かたつむりはゆっくりと原っぱの端へ行くと真っ直ぐに反対の端めがけて歩き始めました。
「ぼくの足の裏は君の何十倍も大きくて敏感なのさ!」
しかたなく少女は後を付いていきました。
「こんなことして、見つかるのかしら、、、、」
(2へつづく)
絵のある喫茶店(雑談場)のことを語る