愛玩犬が吠えるような無駄
こん こん こん
日暮れに赤子が泣くようなルーチン
こん こん こん こん
薄雲の隙間から 月はたしかに春を告げているのに
なぜいつまでも吠えずにいられない
吐き出すものさえ もうなくて
乾いた音だけが 転がっては闇に消える
こん こん 今夜はなんの月
裏の稲荷の狛犬たちも頭上のサクラが気になるかしら
夜の湿りを吸い込んで 蕾は明日こそ開くかしら
こん こん 紺色の帳の下で淡いピンクの春を夢見る
地を覆う命の目覚めすべてが開かれ
おだやかに 息をする日
絵のある喫茶店(雑談場)のことを語る