リーリッルー短篇セレクション 第二回
Loli & Popby by リーリッルー(id:lilliloo)
ボンネット、パニエ、プリンセスワンピース、おでこ靴。全身をBABY,THE STARS SHINE BRIGHTのロリータファッションで飾りたて、キミはボクの前に立っている。
「――ねェ、さわってもいいのよ」
そう云って笑ったキミだけれど、一体キミはどこにいるんだろう? 触れてみるとコットンはふかふかと沈みこみ、シルクのリボンに足をとられてボクはつるつると滑っていく。どれだけ探しまわっても、キミの中にキミの姿がみつからない。
「――だって仕方ないじゃない、全部鎧なんだもん」
Baby the Stars Shine Bright、フリルの海で溺れかけながら、ゴブラン織の舗装路の上を歩いていく。チュールレースは迷路のようで、はしごレースはあみだくじみたいだね。ホントのキミをみせて欲しいんだ。
「――いやよ、だめ。それは下着なの」
ああ、このブカブカが下着だったんだ。でもそんなことは知らないよ。云ってくれなきゃわかんない。キミがなにを嫌がるのかわかんない。キミのアソコがどこにあるのかわかんない。
「――だって仕方ないじゃない、アナタが隠せって云うんだもん」
Baby the Stars Shine Bright、キミのことがとても好きだよ。だからどうか自分のことを責めないで。筋少だって再結成したんだよ。戸川純だってまだ生きてるよ。椎名林檎は変わったね。嶽本野ばらはどうだろう。キミのことを色んな人が云ってるよ。
「――でも仕方ないじゃない、アタシからっぽなんだもん」
じゃあもういいよ、キミのことなんて知らないよ。そんな態度じゃ彼氏なんてできないよ。せっかくキミのことをわかってあげようとしたのにさ、もうつきあってられないよ。
「――そうねさようなら、やっぱりアナタも駄目だった」
キミはそう云ったきり奇麗さっぱり消え失せて、残されたのはBABY,THE STARS SHINE BRIGHTのペチコート。ボクはそれをタンスの奥にしまいこみ、愚痴を云うため友達に電話をかけている。
(ハイク初出 2009/07/16)