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超短編のことを語る

リーリッルー短篇セレクション 第四回 

はじまり      by リーリッルー(id:lilliloo

 

 会社からの帰り道、川べりの鉄塔に鈴成りの神々がぶら下がっていて、「忘れたか」と囁きかけてきた。振りむくと、置き去りにされた凧だった。鞠のような牛のような生物が、子供のころよく遊んだ文化会館の屋根にしゃがみこんで、「無くしたか」と書かれたプラカードを掲げていた。それは遠くにあるガスタンクのようにもみえた。
 それはそれとして、ふと目に入った地平線。子供のころから気になっていたけれど、端のほうがめくれかけている。昔は背が届かなかったけれど今は手を伸ばせば届くので、つま先立ちしてめくってみる。ペリリと世界が剥けて、色々なものがこぼれ出してきた。なんだ、みんなこんな所に隠れていたんだな。
 
 その三日後、ぼくはプロペラのついたダイナモ仕掛けの空飛鯨にのって竜巻の国までむかっていた。

(ハイク初出 2009/07/15 )