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花うさぎのことを語る

2-2

 あれからずいぶん時を経た今をもってしても、おれとあのひとの関係をどう説明したらいいのかはわからない。おれの所属する会の発起人であるという、ただそれだけの関係ではないものがそこにあった。
いちどだけ、唇を重ねた。儀式めいた契約を交わすようなそれを、誰かに告げる必要は今をもって感じない。たとえあなたであろうとも。

 それと同じく、あなたにはあなただけの、あのひとへの言いようのない想いがあることを、当時のおれは今ほど理解していなかったように思う。
気後れと盛大な甘やかしの背後に横たわるそれぞれの狂おしい痛みと苦悩を察していなかったとは言わない。おれはふたりをよく知っている。その「立場」ごとに、またはその役目を外れた場所でさえも、おれは彼らふたりを知らないわけではなかった。

 おれが知らなかったのはたぶん、そういうものではないのだ。

 おれはあのとき過去を見ていた。
     あのひとがそうであったように。

 あなたは未来を見ていた。
     あのひとがそう望んだように。