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花うさぎのことを語る

1-2

 あなたがあのとき自身の叔母について尋ねたかったらしい様子には気がついていた。あなたは不器用で、それともあなたらしい礼儀正しさのためなのか、容易 にそれを口に上らせたりはしなかった。あのひとのほうも、あなたにそれを尋ねる口実を設けようともしなかった。おれはおれであなたの手助けをする余裕などあるはずもなく、結局その日おれたちはただ美味い酒と極上の寿司を御馳走になっただけだった。
 私用のためか、タイを結ばないあのひとは普段よりずっとくだけた様子で、いつもどおり意地悪で、それでいてあなたにとても親身だった。その切れ長の瞳に 浮かぶ微笑みは身近なひとの「やさしさ」をあらわす何ものでもなかったと今のおれは思えるのに、当時はそうと感じられなかった。たぶんあなたが、その遠慮 深さと頑なさゆえに、それをそうと受け止めかねていたのと同じように。