id:usaurara
絵のある喫茶店(雑談場)のことを語る

  • --------- オーバーザブルースカイ ------------
  • シェットランドとかアランとか、羊毛のあたたかさをそのまま表出したセーターが好きだが似合わない。
    あんなものを着たら羊毛どころかひつじそのものになってしまう。
    幼女ならそれもかわいいが、おばさんでは情けないだけである。
    藍染めの布が好きだが、やはり似合わない。
    そんなの着たらトロ箱牽いて魚を売るばあさんになってしまう。
    「着たいもの」とは「着られないもの」なのだということを二十歳代でベンキョーしたから、今はもう無駄な足掻きをしない。しないでいられる。充たされない欲望を想像のなかで充足させながら。

    多分、煙草もそのひとつだ。
    肺機能が人より弱い。

    「せっかく助けてもらった大事な命だ、大切にしろ」とさんざん聞かされて育ち、何かに溺れて享楽的かつ自棄的な人生を送るなんていう選択肢はわたしの手元になかった気がする。そういうある種の呪いから解かれた時点で、つまり大人になった時点でもう一度そういう人生を選び直すことができたのだがしなかったのはなぜだろうと、そんなことを昨日映画の帰りにぼんやり思ったりした。

    その時期に「着たいもの」は「着られないもの」だと悟ったことが、そんなことの判断にも関係していたかもしれないなと今これを書きながら思っている。