- ---------- ストロベリーフィールズ ---------------
ストロベリーフィールズとはどんな天国か・・・・・・と昔よく思った。
周囲には田畑がほとんどなく、苺の観光農園もまだなかった。
さて、また今年もイチゴジャムをつくらないまま梅雨に入ってしまったみたいだ。
ここ数年露地物の苺の供給が減っているのか、この時期になってもジャムにと思える値段までは下がってくれない。
「一年にほんの一時期だけ庶民に訪れる幸福」だったものが、「ほぼ一年中庶民でも手を伸ばせば届く幸福」になった気がする。
そういうのはあまりありがたくない。
でもどちらにしろとても贅沢な現実ではある。
中国人夫婦と一緒に卓を囲んだとき「苺なんて見たことなかった」と彼らは話した。
アジアの同じような気候の場所でそこそこ豊かな層に属す人の暮らしでも「苺」はまぼろしの食べ物だったという。
栽培や出荷や流通にそれだけコストとノウハウが必要な果物だということなんだろう。
日本では園芸店で苗を買って育てればほんの数粒だけど実に簡単に栽培できる。
新婚の初めての春にうきうきした気持ちで苗を買ったことがある。
週末にかわいいバケツに植え込もうと一揃いを購入して出窓に置いた。
ところがその晩は待てど暮らせどダンナが戻ってこない。
仕方なく先に眠ると、翌朝家にはダンナのほかに客人が2人眠っていた。
わたしはそそくさと朝食をとってバイクで遠出をすることにした。
テーブルに書置きと苺の苗を置いて。
「よい天気なのででかけてきます。苺の苗をバケツに植えてね。よろしく」