ネットが普及し膨大な文章を流し読みするようになって「文章の個性」を実感したが、
最近クランチマガジンでまたそういうものに出会う楽しさを与えてもらっている。

当時ウェブは「普通の人」が発表の場を持てる喜びに沸いていて個性と熱のある文章がそこここで読めた。
それがここ数年ですっかり熱を失い、また分散し、見つけにくくなったように思う。
ツイッターを中心に回るウェブに書き手（自分を含めて）は否応なく取り込まれ、よほどの拘りを持って書かぬ限りは知らずコンパクトでブレの少ない表現を用いるよう最適化されていきつつあると思う。
そしてまた、ケータイ小説サイトが花盛りを経て多少衰退してもその著述スタイルはすっかり市民権を得たのだなあと、純文系であるというクランチマガジンを眺めてさえ思ってしまう。
が、同時にまだ自分が触れたい世界もちゃんと生きていると思える瞬間もあり、少しずつではあるがログの山を崩す愉しみを受け取っている。

リズム、緩急、音韻による色彩、単語が喚起するイメージ、休符の数や分量、印象の強弱でできる陰影、といったことが混じり合って文章は音楽のようにたちあらわれてくる。いや、たちあらわれてくる、そのような文章がある。テーマやボリュームに関係なく。

そういった文章が「探せば見つかる」そして「一定の支持を得て存在する」ような場所がウェブにはあってほしい。

（なお、上記はクランチマガジンのリニューアルで感じたことを率直に述べたものです。）