- ------------- 花泥棒 ------------------
「どれでも一個とって」
抱えられた缶には星や花やりぼんの形のブローチが詰まっている。
「おじいちゃんの宝物やろ」
「ええねん、よおさんあるしわからへん」
どうしても選べと言うのでしぶしぶ花のをひとつポケットに入れた。
帰り道、わたしはいつもと違っていた。
ポケットに綺麗なものが入っている。
ポケットに汚いもの(罪)が入っている。
賞というものに縁遠くて長らくピンと来なかったのだが、ピンと来た時にはすでにブローチは失していてくれた子の顔も名前も思い出せなかった。
わたしがいままでに三度泥棒をしたなかの、一番申し訳ないのがこの花泥棒だ。