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花うさぎのことを語る

ピンクのエプロン by usaurara

28. 零れ落ちる

尺が少なくなってきたのでそろそろこの物語全体を通してわたしが見ているものについてお話しようと思います。
そのまえにご承知いただきたいのは、これがコラボをしたusauraraの私見でありたくさんの見方のひとつに過ぎないということです。
物語に何を託したかということを作者にあらためて問うたことはありませんし、それはこれからもしないでしょうから。

なぜ「夢使い」がこんな能力をしか持たぬものとして登場させられるのかを考えなくては、作者が託したものは掬い取れないだろうとわたしは思います。そしてそのことに気づくには、ある種の経験がそのひとのなかに深く沈殿していなければならないのではないかとも思っています。
たぶんそういうひとはこの世の中の多数派ではないけれど、決して無視していいほどの少数でもありません。

また、この小説はBLというジャンルの娯楽小説のみせかけをとっており、そうした以上はちゃんとソレとしての要求にも応えようと努力されてもいます。が、全体をとおしてみればまったく娯楽小説的ではありません。
ここにあるのは「少し立ち止まって考えてみてほしい」という肉声であり(拡声器やマイクで声高に蹂躙するやりかたは決して選ばない)、多くのひとはそれを耳にして「聞こえない」「もっと大きな声で言ってくれないとわからない」という態度をとるでしょう。
それはこういった類の作品の宿命です。本来届くべき場所には届かない。

この作品をBLと呼ぶこと、呼ばれることについて、わたしたちは「名づけの暴力」という観点から「拒むことができるなら拒みたい」と思ってきました。しかしそれを枉げることでこの作品が新しい人のもとに届くならばと作者は妥協をし、現在こうしてたくさんの人に読んでいただけるようになりました。「届くべき場所」と違うところにはやはり届いたのだなと嬉しく思っています。

AとB、あるいはAとAでないものについて。
その境界、あるいは類似、あるいはもしかしたら同一について。
分かたれたことで何が顕現し何が隠蔽されるのだろう。されがちになるのだろう・・・・・・

零れ落ちてしまいがちなちいさなものを掬い取ってくださった方々には、コラボパートナーとして心から御礼申し上げます。どうもありがとうございました。
ここクランチマガジンでは本編連載を終了し、外伝に入っています。引き続きお楽しみいただければ幸いです。