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花うさぎのことを語る

ピンクのエプロン by usaurara

25. ドラマティック

付き合っていたころの彼は世の男性並には写真に熱中しており、重いフィルムカメラを毎度デートに提げてきた。そうして数年間、レンズに微笑みかける女の子の写真を量産したあとパタリと止めた。結婚したのだ。

つくづく思うことがある。「なぜ結婚したら男は妻の写真を撮らないのか」ではなく。
誰もがほぼ同じ位置に二つの目を持ち、同じ場所に居ながらも、観ているものがまるで違っているということ。カメラで視界を切り取った集積を眺めていると、そんな当たり前のことがあらためて意識されるものだなと。
いわゆる「ポートレイト」を彼は撮りたかったのだろう、そして撮ってくれたのだ。それには素直に感謝するが、自分はそれを好まなかった。そういう指向の違いは自分が携帯というモノを手にしてからいっそうはっきりした。わたしは写真にひととその場の関係、ひととひととの関係、ひととモノとの関係というように、AとBとの間にあるドラマを拾いたいのだ。

三本目のコミックは茶髪君がカメラマンをする話だ。愛さんの設定では「シネフィル男子」であるから、そりゃここぞとばかりにやりたいことをやるだろう。カメラアングルにも拘るだろう、ムービーも撮るだろう・・・・・・と、カメラを手に動き回る彼をたくさん描いた。そして最終的には、その姿をさらに映像に組み込む二重構造で仕上げたいという構想を抱いていた。(これは出来ず仕舞いだが)

「なぜ結婚したら男は妻の写真を撮らないのか」の答えにもはや興味もないAとBのわれわれだが、あんなポートレイトを撮っていた時期があったという事実は写真の中のドラマよりもずっとドラマかもしれないと思ったりする。あんど現在進行形だ。