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花うさぎのことを語る

ピンクのエプロン by usaurara

23. トランペットと波の音

長い連載期間だったので失敗はいくつもある。

第一部で集客の手として「朗読」を取り入れたのだが、特に何の問題も感じなかったため「続けよう」と合意した。だが、連載が進むにつれこれが失敗だったと気づく。

朗読とテキストの併載ということは、その文章が朗読の「音」だけで十分に意味が通じなければならない。特殊な文字使いで文章に余韻を与えることができない。また、音で聞かせる場合「時間のまとまり」についても敏感でななければならない。何話にもわたって「ひきずる」ことができないのだ。さらに、性描写では「えっ・・・・・・こ、これ、読むんですか?」と朗読者に拒否られるようなことも書くわけにはいかないw
そういう枷が、第二部と第三部の文章に色彩差を生んでいる。第二部は第三部にくらべ文章にアクが少なく、抑制的であるのがおわかりいただけると思う。

でもこの失敗は、お互いいい勉強になった。特に愛さんはそうだろう。枷を嵌められることで、自分の著述スタイルがどう変わり、それが客観的にどう見えるか、枷がどう作用したか。今ではなくてあと一年か二年先。明瞭になることがあるんじゃないかなと思う。

さて、上の3つの絵は第三部で動画と一緒に並べたものだ。
朗読から解放された第三部では「動き」や「広がり」をテーマにした。ストーリー展開が主人公たちからその外部へひろがるのにあわせて。単なる「挿絵」でなく、色彩的に同調させつつ別のものを投げるというかたちになった。
テキストに動画や音を組み込むのはかねてからの念願だったので、これに手をつけられたのはありがたかった。が、やり残したこともある。

今まで話していなかったが、実は海を舞台にした三つめのコミックは最終形ではない。他のふたつにくらべて画面がスカスカしているのはそのせいだ。吹き出しでセリフを入れるのを極力抑えた。あれをもとに画像を再編してトランペットのBGMと波の音をかぶせ、動画にするためだ。

それが形になる日が来るのかはわからない。わからないままでいい。なるべきものはなるのだから。