ピンクのエプロン by usaurara
20. 北へ
フィンランドのロードムービーを観た。南のヘルシンキから600キロ、凍てつく景色を北へと走る。
その映画のなかで、寝床にはいった孫娘に老人が話を聞かせるシーンがあった。極限に追い詰められたものが出遭う小さな幸福。
実際にあの国で今も語られるものか、忘れられた古いものか、映画のオリジナルか、そもそも設定として「老人の即興」とされているのかはっきりしないが、あの自然に暮らす人々にふさわしい厳しく美しい寓話だった。
こう書いたら暗い映画と思われてしまうが、筋もキャラクターもほどよくハチャメチャで終始ニヤニヤ観ることができる人情コメディだ。そのいかにも作り話的な解放感をしっかりと地面につなぎとめるのはフィンランドという土地である。その印象は、明るく伸びやかにみえながら哀感を滲ませるかの国のデザインにも通じる。
昨今の北欧デザインブームには食傷気味だが、素材を生かすためによく抑制されたデザインには昔から惹かれている。特にガラスが好きで、一時期フィヨルドを想わせるボトルのフィンランディアをよく飲んだ。
男同士で呑むこと、これは生まれ変われるならやってみたいことのひとつだ。だから「夢のように・・・」の伴走中も男たちによく飲ませた。店長にはわたしが好きなタンカレージンを。
もうひとつ、ぜひやってみたいことがある。この映画では「呑み」はもちろん、そのシーンもあった。
予告編の最後に出てくるのでよければご覧ください。映画のタイトルは「旅人は夢を奏でる」です。