id:usaurara
花うさぎのことを語る

ピンクのエプロン by usaurara

19. 紅い芍薬 闇に蛍

兄を亡くした季節が初夏だったせいか、黒髪君の「喪失」もそのころのような気がした。

制服のジャケットは、クリーニングに出そうと部屋の端に吊り下げられていただろう。
カッターシャツは洗いあがっている。
洗ったひとはもうここにいない。

彼は鏡をみている。
その向こうをみている。

さて、衣替えのシーズンだ。
ものを右から左へ動かしただけでもひとはときめいてしまうらしい。
高血圧のわたしは用心せねばならない。

同様に、お嬢さんがたは夏に用心せねばならないらしい。
夏は恋の季節で、恋は人生が片付くときめきの魔法となることもあるから。