ピンクのエプロン by usaurara
12. 花の散る音
小さいころから聴こえぬ耳をひとつ持っている。面倒で、そんなお飾りはないほうがマシとさえ思ったものだ。
が、聴こえすぎる耳というのもきっとつらい。拾いたくないノイズを拾う日が続けば、そのひとは侵入を防ぐために心に壁を積み始めるだろう。「うじうじくん」と読者からネーミングされる彼=黒髪君は、他者との接触に少しの困難が生じる運命をはじめから負っている。
他者から「ぼんやり」にも見えるその佇まいは、彼だけのものではなく彼ら共通のものではなかろうか。
それは、何も起こらぬ日などありはしないのに「今日もいい一日だった」とひとが日々を送るのと同じ安穏さで彼らが日々を送るための「手立て」なのではなかろうか。