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花うさぎのことを語る

ピンクのエプロン by usaurara

3. こわばる理由

少女の膝にあるのは帽子とおなじ真っ白の籐製バスケット。蓋には赤い実の飾りがある。ほの暗いのは車中だからで、車窓のプラットホームは逆光ではじけてよく見えない。記憶の中の自分を描くあいだ、被写体となってこわばるからだを思い出していた。

2000年代の幼女が父親のカメラのまえでこんな表情をするとは思わない。(生まれた時からムービー攻めに遭うこどもたちが!)こんな表情を選んだのは作中の二人 ――店長と娘―― の間に「こわばる理由」があるのを暗示したかったからだ。結局は使わなかったけれど。

カメラから溢れてくる父の愛情にほんの少し困惑する程度にはわたしは敏感な子供だったと思う。父の愛と母の愛のアンバランスに怯えていたこのころ、わたしはお漏らしやら迷子やら粗相をよくし、この写真を撮ったあとには忘れ物をした。

お気に入りの籐のかばんを失くした哀しさがこの写真にはいつもついてくる。