- --------- 鬼の灯り -----------
夏の終わり、母がほおずきの枝を持って帰り嬉しそうにテーブルに置いた。
「あんた、これ見たことある?」
「ない」
「剥いてみ」
その衝撃がなんなのか、のちには思い当たったが
そのときのわたしは言葉が継げずにとまどっていた。
「きれい」
と言った。
「怖い」
と言いたい気もしたが、なんとなく言わなかった。
その数年あとにほおずきが鬼灯であると知って「ああ」と思った。
怖かったのはあたりまえだったと。
怖いから美しいのか、美しいから怖いのか
波が引いてはまた返すように問い続ける。
それは海と同じくらい怖くて美しい。