同居人と飯を食いながら、ぼんやりとテレビをみていたら、当時世間にもてはやされていた水泳選手が、きらびやかな衣装をまとって画面に登場した。
「あいつはどうにも好かん」
私がつぶやいたのを聞いて、同居人が問いかけてきた。
「どうして」
正味のところ"生理的に受け付けない"風味の感情が出発点なのだが、それではあまりに芸がないと思い、理屈を付けてみた。
「ええとね、妙な靴を履いていたとか、なんたらいう銘柄の服を着ていたとか、そんなことで新聞に取り上げられるのが気持ち悪い。水泳の選手なら水泳で取り上げられるようにしろと思うんよ」
「ふうん、別にどうでもいいじゃない」
「そういわれるとそうなんだが、あの、ええと、そうそう、周囲におだてられて"地に足が着いていない"感じがするのがどうにもね」
喋りながら、我ながらうまくまとめたぞと思っていたところ、同居人はこう切り返した。
「水泳選手なんだから当然ね」
(ほぼ実話)
超短編のことを語る