鈴木は激怒した。
8年前に全従業員10名ほどの小さな会社に転職した彼は、同年代の山田や佐藤と切磋琢磨し、いまや会社に不可欠な存在になっていた。今年に入ってから、鈴木は3年来携わってきた大きなプロジェクトを成功させ、会社に大きな利益をもたらした。
この仕事が好きだ。お金のために働いているわけではない。そうはいっても、昇給していくことは、自分が評価されているとはっきり感じ取れるので、それは喜ばしいことであった。
今年は鈴木のみならず、山田や佐藤も着実に業績を積み重ね、会社は順風満帆といえた。そんな中、夏のボーナスの時期を迎えた。
例年、6月末に、給与の口座に振り込まれることになっているが、今年は月末が土日と重なったせいか、その前の金曜日に振り込まれることはなかった。7月になって出勤した鈴木の耳に、始業前に談笑する山田と佐藤の会話が聞こえてきた。
「今年はボーナスたっぷり出たから、家族旅行は海外にしたよ」「そうか、俺は家族がいないけど、大型のプラズマテレビを買うことにした。夏休みは大画面でスポーツ観戦だな」
どういうことだ。山田や佐藤の活躍は認める。彼らはとても優秀だ。しかし、今年、自分が会社にもたらした利益は、山田や佐藤のそれと比べて決して劣るものではない。それは彼らも認めるだろう。それなのになぜ、自分だけボーナスが振り込まれていないのか。
社長室に乗り込み、思わず声を荒げた。「社長、どうして自分にはボーナスが支給されないんですか」
社長は一瞬戸惑った様子を見せたが、にこやかにこう言った。
「いや、すまんね鈴木くん。実は君の業績は今回飛びぬけていたので、今日の朝礼で表彰してから、そこでボーナスを手渡ししたいと思っていたんだよ」
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時間差ボーナス
コネタ何かを受信のことを語る