はっきり思い出せないんだが思い出そうとすると涙が出る話
時系列もはっきりしないが、この内容からするとたぶん昭和が終盤を迎えていたころ、小学校3、4年のときに聞いたのが最初ではなかろうか。
後に、ムーやワンダーライフの熱心な立ち読み読者になった私も、当時は世間的に「オカルト」などとくくられるあれそれについては禁忌的なおそろしいものととらえ、怖いもの見たさのチラ見を除けば、避けて通るようにしていた。
そんな中、学校から「こっくりさん禁止」というようなお達しが出る。
こっくりさんに限ったことではなかったかもしれんが、ただ「危険なので禁止」という説明で、かえって興味をかきたてられた私は、身近な年長者に意見を求めた。
この意見を求めた相手がはっきりしないのだが、いろいろ考えてみると、近所に住んでいたふたつ年上のごぼちゃん(notコボちゃん)ではないだろうか。あるいは、こちらが意見を求めたわけでもなく、ごぼちゃんから世間話のひとつとして聞かされた話だったか。一方、実姉に聞いた可能性もあるんたが、ともかくこんな話を聞かされた。
「友達の姉ちゃんが、学校で禁止されているはずのこっくりさんを実施した。こっくりさんへの質問は『昭和の次の元号は何になるのか』。答は、漢字はわからんが『があらん』と出た」
こいつは衝撃であった。私にとっての禁忌が複数犯されているのだ。
学校での禁止事項。しかもそれがオカルト的なスーパーナチュラル的なあれ。質問内容は天皇にかかわること(しんぶん赤旗日曜版のまちがいさがしとクロスワードパズルを愛読していた私だが、同時に、旗日には国旗掲揚する家でもあった)。あまつさえ『があらん』って何よ。日本語じゃないんじゃねえの。あっ、もしかして『かわらん(変わらない)』ってことか?それって昭和が終わる前に全てが終わるのか?いや、不死のわざが編み出されていて、昭和が永遠に続くのか?
たいへんにおそろしい気持ちになったが、表面は平成もとい平静を装ってやり過ごしたと思う。
後年、野良犬に噛まれて、マスターキートンで得た狂犬病の印象から、狂犬病発症を恐れて眠れぬ夜を過ごしたことがあるが、それとこれがおれさまの恐怖体験トゥートップかもしれん。
後年、元号は平成になり、それは『があらん』ではなかったわけだが、ごぼちゃんの友達の姉ちゃんはどう思ったのだろうとか、どうにかしたら平成ががあらんになるんでないかとか、ここは平行世界でどこかにがあらんがあるんじゃないかとか、いろいろ考えてまた恐ろしくなった。
検索して同じような文字列が出てきたらたぶん声が出てしまうので、まだ検索したことがない。