おそらくヤングジャンプかモーニングを読んでいる初老と言えそうな年恰好のおっさん。隣の席の、おそらく制服であろう半袖半ズボン、首から水筒をぶら下げ、白い帽子をかぶった小学生が、正面からおよそ45度顔の向きを変え、おっさんが読み進める雑誌を覗いている。
おっさんは小学生に気づいているのかどうか、ゆっくりページをめくるが、ときどき船をこぎ、手が止まる。
二駅ほどそれが続いたが、ついにおっさんが雑誌を鞄に収納する。ちょうどそのとき私とおっさんの間に人が立ち、おっさんの様子が見えなくなるが、小学生の様子は見える。続きが気になるのだろうか、やや唖然とした表情だ。
次の駅まで少し時間があったが、おっさんは席を立ち始めたようで、もうほとんど真横を向いた小学生の視線がそれを追って上下する。
おっさんが席を立った。あら、小学生も立った。じいちゃんと孫なのか。おっさん扉へ向かう。小学生も後を追うようについていく。とくにコミュニケーションは見られない。駅に着く。おっさん降りる。小学生は扉の前を素通りして、車両の奥へと向かう。あれ、家族ではないのか。
結局小学生はその駅では降りなかった。乗客が増えたため、その後の小学生の行方はわからない。
電車内にてのことを語る