吊革スタンディング時、斜め前の席に座ったくたびれた感じの兄ちゃんがきわめてだらしなく私の正面の姐さんのほうに傾いていている。兄ちゃんの前に立っていたら、蹴飛ばして起こしてやりたいくらいだが、私の隣に立ったおっちゃんはサンデーを読むのに夢中だ。
姐さんは不快そうにときおり顔ぶれをしかめつつ上体を起こしている。兄ちゃんはもう完全に姐さんの背後に傾いてしまった。
いくつめかの駅で、姐さんほか、数名が同時に席を立った。兄ちゃんは少し経って目を覚まし、周りを見渡した。どこなのかよくわかっていない様子だったが、慌てて降りていった。
電車内にてのことを語る