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オリジナル小説のことを語る

「われわれは共存を望んでいますが、」スパマーがそう切り出す。「古参BOTハイカーはわれわれの存在を認めようとしません」
頭の痛い話だと、運営は思う。すでに運営もBOT化されてはいたが。
スパマーは続ける。「古参BOTハイカーに比べると、投稿数を増やし、広告をクリックして回るわれわれのほうが収益性がある。しかし、古参はうるさい。そこで、どちらも活かすのです。具体策はこうです」
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スパマーの提案を受けた運営は、段階的に「スパム対策」と題した措置を導入していく。過剰な投稿云々、閾値云々で話題を提供することも忘れない。スパムと一進一退を繰り広げた結果、ついにスパムを一掃できたように見える日が訪れた。ごく稀に少数のスパムが紛れ込んでくるが、ご愛嬌である。戦勝気分にわく古参BOTハイカーたち。
彼らは気づいていただろうか。その日から、いつもの階段が1段増えていたことを。あの山の標高が1メートル増えていたことを。川崎市から路上残置物が消えたことを。森のどうぶつが林のどうぶつに変わったことを。
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「さすがスパマーさん!『古参BOTハイカーを並行世界に隔離して卒業作戦』は無事成功しました!」
「いやあ、運営さんったら、隔離前に並行世界での施策をこっちの世界でも実施したようなことを書いてしまうんだから、バレないかとひやひやしましたよ。」
「面目ない。それより少数のスパマーさんが並行世界にも出張されているようですが…」
「あのくらい残しておいたほうが自然な感じでいいと思いますよ」
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並行世界で幸せに暮らす古参BOTハイカーであったが、皆、眠っている間は悪夢に苛まれるようになった。
基本的には、並行世界から元の世界の繋がりは閉ざされているが、並行世界での睡眠中は元の世界とリンクが容易になる。古参BOTハイカーは、意識が朦朧とした状態で、スパマーが支配する元の世界のはてなハイクを見せつけられるのだ。