小学校のとき、学期に1回程度、「お楽しみ会」と称される学級ごとの催しがあった。班などのティームごとに、何らかのだしものを披露するという代物で、我が世の春を謳歌していたわたくしなどにとってはまさにお楽しみであったが、アレがアレした中学校以降にあんなのがあったら面倒でしかなかっただろう(今ならまた事情が違って、単独で旅行先散髪の楽しみを延々と説き続けるのはやぶさかてはないが)。
だしものの内容は班に委ねられた。1クラス6-8班はあったはずで、事前の終わりの会などでだしものを宣言して調整する場が設けられていたとはいえ、ネタが重複しなかったのが不思議だが、あるいは重複上等だったのかもしれない。
定番はクイズや演劇、コントのようなもので、歌や演奏の類はあまりなかったと思う。そして、思い返すだにおぞましい、他愛なくもえげつない、その名も「好きですか嫌いですか」というアレも、定番のひとつだった。
好きですか嫌いですかの進行は以下のようなものだ。
・黒板前が舞台、通常机と椅子が並ぶところの机をどかして椅子だけ並べたのが観客席。
・主催者側(演じる班)は、画用紙1枚につき1種類の固有名詞や概念などを表す単語あるいは文、または絵でもなんでもいいので観客席から判読できるよう大書したものを複数用意する。
・観客を1名呼び出して回答者とし、観客席に向けた椅子に座らせる。
・回答者の頭上後方に画用紙を掲示し、回答者以外がそこに書かれた内容を共有する。そこで司会が「好きですか嫌いですか」と問かける。
・回答者は(観客の反応以外に何の情報もない状態で)好きか嫌いかを答える。
・1回答者につき質問は5問程度。回答者は各班から1人ずつ程度。
・ぜんぶ回答が終わったら回答者を交えて答え合わせ。
演劇など、練習が必要で、原則観客が参加せず、受けるかどうかわからないだしものに比べると、手間いらずでじつに簡単だ。質問内容も定番があって、りんごやみかん、好き嫌いが分かれそうな納豆といった食べ物、国語や算数、体育などの教科、あるいは人気のテレビ番組などを混ぜておけば、確実に一定の反応が得られる。無難にこなすならそれで十分だ。
が、質問内容と回答者の組み合わせによっては異様な盛り上がりをみせる。
早い話が、良い仲と噂される一方を回答者に指名し、もう一方を示す何かを画用紙に書いておけば良いのだ。
ただし、いきなりそれをぶつけるのは露骨なので、回答者単位でみると後半の質問に混ぜ込む。また、一番人気の回答者は、だしものの最後に呼び出す。しかも、呼び出し順や質問内容が特定を避けたふうに見せる猿芝居を打つ。たとえば1班に一番人気がいるとしたら「各班のリーダーに出てきてもらいます、きょうは2月なので2班から順番にいって最後に1班」とか。いやっ、おぞましい!
しかしながら一番人気のやつは「ひゅーひゅー」となっても動じないからじつににくいあんちくしょうだ。
いまわたくしが回答者になったとして、質問内容があのひとやあのひとやあのひとだったらどうすればいいのかしら、きゃー。