ハイクにも何度も書いたと思うんだが、わたくしの左手親指には爪と第一関節の間のスペースに大きな切り傷の痕がある。
もう30年以上前、小学校二年生の冬、ある日の昼下がり、自室として与えられた(とはいえこのコロは両親と一緒に寝ていたはず)2階の部屋で、コクヨロングランデスクに向かって、付属の青い布張りの座面を備えた椅子に腰掛けたわたくしは、おそらくトレーディングのリザルトとしてゴットしていた、オレンジ色の、前半分と後ろ半分の境目にバリのある、いかにも型取りしてコピーした粗悪品ですよという雰囲気のモンゴルマンのキン消しの首を、それに先立っていまはレノファ山口のホームスタジアムとしても使われている維新百年記念公園の敷地内で行われた何かしらの催しで手に入れたオレンジ色のボデーのカッターナイフを用いて刎ねようとしたところ、思いのほか強靭な首筋に跳ね返された刃先は、私の左手親指の皮を半月状に広範囲にめくったのだ。その瞬間はただただ驚いて粗悪モンゴルマンとカッターナイフを手に持ったままだったと思うが、すぐに皮の隙間から赤黒い血が溢れ出し激痛をおぼえたので、それらを放り出した。右手で左手を抑えながら階段を駆け下り、叫び声を上げながら祖父母の部屋や応接間を駆け巡った。一周回ったところで取り押さえられ、応急処置を受けて病院に連れて行かれたのだろう。傷がくっつくまで、学校で水を使った掃除は免除された。くっつくと、弓なりの傷痕が残った。
今もはっきりわかる傷痕。何度か刃を取り替え、ストッパーはくたびれてすぐに外れてしまうが、カッターナイフはまだ使える。粗悪モンゴルマンだけは、結局首を刎ねたのかどうか、どこにいったかもわからない。
今日、コンビニエンスストアで、粗悪でないモンゴルマンに再会した。まさにこのポーズのモンゴルマンだった。いまのところ、開封するつもりはない。