向田理髪店 著:奥田英朗
夕張を思わせる、かつて炭鉱で栄えた町・苫沢を舞台に、町に2軒残った理髪店のうちの1軒、向田理髪店の主を中心に、町に起こるあれこれをつづる短編集。
向田理髪店の主・康彦は50歳。康彦の幼少期には苫沢はすでに衰退期に入っていた。当初、父親が始めた理髪店を継ぐつもりはなく、いちど札幌で就職したものの、仕事で壁にあたり、同じころ父親が体調を悪くしたこともあって、苫沢に戻って父親の店を継いだという経緯がある。小さな町で、何かあると住民全員が当事者のようになりがちな上、康彦は商売柄もあってか、町の人に中立な立場をとることが多く、間を取り持つような役回りが多くなる。
わたくしの好きな要素たっぷりでした。おすすめです。
わが故郷の宇部市も炭鉱で大きくなった町ですが、宇部興産などを中心に化学工業に転換して、うまいこと衰退を切り抜けたのだと思うと、なかなかやるなあといまさら思う次第。
炭鉱・鉱山町を中心に散髪屋探そうかなあ。