「知ってる」と答えた。「ねえつのねこさんていうのがいるのよ」と私が話しかけたらそう返事してくれたのだった。電気羊も羊であるからそりゃあつのが生えているわけで、でもぜんぜん違うつのだなあ、と弧にそって撫でる。つのねこさんは、しかのつの。「あら…でも…わたし…つのねこさんのこと、ねこだと思ってないんじゃないかしら」羊の顔を見ながら呟いた。「わたし、つのねこさんのこと顔の短いしかだと思ってるんじゃないかしら」つのねこさんの写真しか見たことがないから、枝分かれしたつのが生えていて、かわいいお洋服を着ていて、後足で立ち上がっていることしかわからない。「靴は、履いていたかしら」「はいてる」電気羊の後足がたん、と鳴ってころんとまるい靴になる。見た目を探してきて再現してくれたらしい。「手は…肉球かしら。ねこならひづめじゃないわよね」電気羊はしばらく黙って、黙ってはいるんだけれど、いーんと小さな唸り声を鳴らしていて、「…ゆびがある」とかわいらしい指のそろった手の甲をそっと差し出した。実物を見ないことには肉球があるかどうかまでわからないのか、再現できないところが見えないよう角度に気を使って差し出している。手袋を買いに来た子ぎつねみたい。ふふふ、と笑ってしまってから手の甲を握ってやった。「じゃあ、きっとねこだわね」電気羊と目が合う。あら、こんな、こんなくりんとした眼だったかしら、こんな短い鼻面だったかしら、「そんな」つのねこさんになってと頼んだわけじゃない、「やだ、もどってよ」電気羊のつのがにゅいにゅいにゅいと枝分かれしかけて、もこもこの毛はお洋服になりかけて、電気羊は私の慌てた声から“何に”戻ってほしいのか判断しかねたらしく変化を止めた。私は慌てたまま、こんなんじゃあ電気羊じゃない、電気羊じゃなくなってしまったらどうしようと思いついてしまったらもうだめだ。もう電気羊をかえなくなってしまう。だってずっとかってない。電気羊かってなかった。
うちの電気羊が…のことを語る