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2017年の読書を振り返るのことを語る

「火花」につづき作家・又吉直樹は本物だ、と思わせた「劇場」
しかし、この人が描く主人公なり準主役たちはいつもどこか内なる狂気を秘めている
そういう人間をあたかも普通の人のように見せる、この小説家の力は何なのだろう
お笑い芸人とか脚本家とか、どこか作者とリンクする主役は、どうしても彼を連想させる
まぁ実際、こんな人がいたら怖くてしょうがないけれども
「劇場」の登場人物で一番の危険人物は語り手である「僕」だと思われる
読んでいると、こんな人間からはよ逃れな、と「僕」の恋人であるヒロインに言葉をかけたくて仕方なくなるけれど
それでもハッピーエンドを望まずにいられない
そんな結末はあり得ない、と最初からわかっているのに
これは悲恋かもしれないけれども、「僕」もその彼女も、恋とか結婚とかの前にまず、才能というものを求めつづけて、それに振り回されて、という点でも悲劇である