id:kutabirehateko
id:kmizusawaのことを語る

むかし小田急線の新百合ヶ丘→新宿間で白人男性の隣に座った酔っぱらいが
「ガイジン! おいガイジン! 何やってるんだ、てめえ外国へ帰れ」
「おい、返事しろよガイジン! あ? なんだ、日本語で喋れよ。偉そうに!」
と延々絡んでいたことがあった。
 
十代のお嬢さんだった私は座席の前に立ってむかむかしながら見ていたんだけど、
「危ないからやめなよ、俺が言うから」
と、一緒にいた男性が言うので数駅黙って見ていた。周囲も嫌な顔をしながら黙っている。おっさんは絡み続け、私の隣にいる男性はいつまで経っても何も言わない。
とうとう成城学園のあたりで「いいや、言うね!」と思い、私は酔っ払いに
「おっさん、いい加減にしなよ」
と言った。
  
「あ?」
「いい加減にしろって言ってんだよ」
不穏な空気ただよう車内。私も怖くなかったわけじゃなく、ただ見るに見かねて言ったのだった。しーん。ゴトンゴトン ゴトンゴトン
 
酔っ払いはしばらく私を見ていたが、とつぜん
「あなたは立派な人です」
と言った。
「あなたは立派な人だ、樋口一葉のようだ。ねえ?」
掌返しになんか笑ってしまった。車内の空気もやわらいだ。正直ほっとした。
そのあと酔っ払いの隣に座っていた中年女性が、酔っ払いに世間話をふって機嫌を取り始めた。その後酔っ払いは新宿まで白人男性にはかまわなかった。
 
新宿駅について、改札に向かってどんどん歩いていたら、後ろからぽんと肩を叩かれ
「Thank you very much!」
と絡まれていた白人男性に言われた。とてもうれしかった。