第6章 残されたTシャツ
式の日の朝、私が純白のドレスとティアラをうっとりと見つめていると、丸山が青い顔でやってきて言った。
「お嬢さま、岸辺がいません。部屋から逃げ出しました」
小窓から食事と水を差し入れたとき、姿が見えなかったというのだ。私は丸山のほかに二人のボディガードを連れて、地下の彼の部屋の鍵を開けた。
テーブルの上には婚約指輪が置いてあった。指輪はこの三ヶ月彼があらゆるもので叩き続けたせいで傷だらけだった。
「どうやって外したんだ・・・これではGPSも使えないし電流も流せない」
「お嬢さまの鍵を使わずに指輪を外すには薬指を切断するほかないはずだ」
私はベッドマットを床に引き摺り下ろし、念のため枕と羽根布団にナイフを突き立ててみた。窓のない部屋に羽が舞い散り、喘息もちの丸山は激しく咳き込んだ。
「すぐに探しなさい。ナイトビジョンを」
そのときだった。ドアの影になったベッドの足元に、彼のタキシードを着せていたトルソーが立っているのが見えた。
タキシードは脱がされ、白いTシャツが着せられていた。黒々と大きな字で日本語でなにか書いてある。
「これが、私のプロポーズに対する露伴の答えなの・・・?」
この写真にタイトルをつけてくださいなのことを語る