防腐処理を施した死体二体を公的期間からレンタルして、夫と旅をしている。
死体は歩いて、話を理解する。よく考えたらゾンビ状態。
数日借りて、最終日返しに行きながら「返したらどうなるんだろう。荼毘にふされるんだろうか」と考えて、死んでいるんだな、と痛感して、胸が痛くなる。
電車の中で姿が見えないのではっとしてきょろきょろしていたら、「ちゃんと二体ともあるよ」と夫が指さす方を見ると、サーフボードくらいの大きさの包みが二つある。
電車を降りて、体の弱い祖父母を支えるように死体を支えながら歩く。死体には人権がない、ということを考える。
返しに行った先で夫が手続きをしている間、ビニールカバーのベンチに悲しい気持ちでぼんやり座っている。市役所のような、病院のような建物だった。死体たちに別れの言葉も言えなかった、と思う。死体は死んでいる。悲しむこともないし、自分の先行きを選ぶことも出来ない。だからこうして連れ回されているのだ。わたしもそうして連れ回した一人にすぎないのだ、と思う。
「どうだった?」
「鰻食べさせたって言ったら『舌が傷むからやめてください』って言われた。あと、『よく自力で返しに来ましたね』って。三千万くらいするらしい」
傷つけないでよかった、高級車くらいか、と考える。映画レインマンのラストのようなどうにもならない切なさを感じ、死体と旅した日々を思い巡らす。
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