涙をぬぐつて働こう
丙戌歳首に
みんなで希望をとりもどして涙をぬぐつて働かう
忘れがたい悲しみは忘れがたいままにしておかう
苦しい心は苦しいままに
けれどもその心を今日は一たび寛がう
みんなで希望をとりもどして涙をぬぐつて働かう
最も悪い運命の颱風の眼はすぎ去つた
最も悪い熱病の時はすぎ去つた
すべての悪い時は今日はもう彼方に去つた
楽しい春の日はなほ地平に遠く
冬の日は暗い谷間をうなだれて歩みつづける
今日はまだわれらの暦は快適の季節に遠く
小鳥の歌は氷のかげに沈黙し
田野も霜にうち枯れて
空にはさびしい風の声が叫んでゐる
けれどもすでに
すべての悪い時は今日はもう彼方に去つた
かたい小さな草花の蕾は
地面の底の暗闇からしづかに生まれ出ようとする
かたくとざされた死と沈黙の氷の底から
希望は一心に働く者の呼声にこたへて
それは新しい帆布をかかげて
明日の水平線にあらはれる
ああその遠くからしづかに来るものを信じよう
みんなで一心につつましく心を集めて信じよう
みんなで希望をとりもどして涙をぬぐつて働かう
今年のはじめのこの苦しい日を
今年の終わりのもつと良い日に置き代へよう
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