ハロン湾でカヤックに乗るイベントがあった。もちおはジョーズがトラウマで海が大嫌い。
どうしようかな、と思って見ていたらUK走り屋とおかんが順番待ちをしていた。
「あなた、乗るの？」
「いえ、見てるだけ。カヤックに乗ったことはありますか？」
「初めてなの。とってもナーバスよ」
おかんは目を閉じて胸を押さえながら言った。妊娠中の奥さんはベンチで待っている。
振り回されているおかん。

結局わたしともちおは10分ほどカヤックでハロン湾をうろうろしてすぐ戻った。
わたしの救命胴衣は三つのうち二つはホックがなく、残りの一つは壊れていた。
「これで大丈夫なの？」とガイドに聞くと、「いや大丈夫じゃないけどサイズがこれしかない」と言った。
それじゃ意味ないだろ。

船に戻るとUK走り屋が「カヤックどうだった？」と聞いてきたのでホックが壊れてた話をした。
「問題ない。俺は泳ぐの得意だからそしたら俺が泳いで助けに行く」
UK走り屋は泳ぐのが好きで何十キロも泳ぎ回れるのだそう。その後UKおかんからもカヤックの感想を聞かれる。
「すっごい濡れました」
「あー、濡れるわよね。私は明日はもっとカヤックに乗るの」
「え」
「逃げ出したいって思ってるわ」
明日も振り回されて予定のおかん。