「旅慣れないから荷物が多いな・苦笑」
とか絶対に言うな、でも荷物はほんとに少ないんでした。物が多いの大嫌いだからね!残念賞!
と思っていたら、麻薬捜査官もびっくりな持ち物検査が始まり、
「こんなもの絶対にいらない。馬鹿じゃないのか」
を合言葉に着替えは言うまでもなくガイドブックからポケットティッシュ、はてはサニタリーポーチに至るまで徹底的な軽量化指導が入り、その後こんまりばりのパッキング指導が始まった。
子どものころはこのような父が心底嫌で長年距離を置いてきたが、大人になったいま
「絶対にいらない。馬鹿じゃないの」
と始終夫の持ち物に苛立ちを隠せない自分のルーツがこんな身近なところにあったことに呆気にとられた。
「俺の友人はカメラのフィルムケース一個まで重さを量っていくんだ。俺なんかまだまだだ」
と娘の荷物を次々減らす義父を前に、パンパンのバッグを抱いたもちおが青ざめた顔で正座していた。