実話で現在進行形なのでオチはない。
母はあの場所に家を建てられないんじゃないかと、これまでとは違う理由で思う。
実は今年に入って母は老後の維持管理を考え、何度か土地を売りに出した。
そのたびすぐに買い手がついたが、直前になって話は流れた。
銀行から融資を受けられなかったり、それぞれに合理的な理由がきちんとある。
でもあの仁王立ち男は、母に土地を持たせておきたいんじゃないかと思う。
住ませるためじゃなく、家を建てさせないために。
土地を見た帰りひとつ不思議に思ったことがある。
それは、母はこれまでよく禍々しいものや忌まわしいものと関わりのある土地と縁づいてきたのに、今回は清々しく神聖なところと縁づいているらしいということだった。
現に母がいま住んでいる部屋もラップ音がひどい。
アパートを借りると言い出して部屋を見たとき、出るだろうと思ったらやっぱりだった。
「ベッドの頭のところでがちゃがちゃがちゃがちゃ、うっるさくって眠れないのよ」
母はネズミか何かの話をするように言う。
土地の神社か何かで魔除けの塩というのをもらって置いたら止まったそうだ。
それでいいのか。
土地の方はエージェントに頼んで挨拶を済ませてあるからと考えているらしい母。
でも一回、家を建てる前にシェアハウスになるかもしれない方々の性格に、個人として向き合ってみたほうがよくないか。