その日は雨で、私は夫と二人で母の部屋に立ち寄り、外で食事をすることになった。
でも当てにしていた店はどこも休みだった。諦めて車を方向転換させた時、ふと
「こっちへ進むと母の土地がある、そっち方向で食事をして土地を見に行こうか」
と思った。もう辺りは真っ暗、雨は割合激しかったが、母は喜んだ。
それで食事は道中店を探してとることにした。
食事を済ませて土地に着いたのは9時ごろだったと思う。
住宅街の後ろの山には全国的に有名な神社があり、途中まで参道を車で走り、角を曲がって住宅街に入った。
山を切り崩して更地にした、何もない草原の合間に工場やパチンコ屋がある。
その草原の一角が住宅街になっていた。
母と同時期に土地を買った人達の建てた家はすでにしっくり馴染んでいた。
どうということもない、閑静な住宅地だった。
「ここ、この角」
と母に言われて車を停め、まずわたしが助手席から降りた。
母は元々生えていた樹をなるべく残すことにこだわっており、背の高い木が何本もあった。
そして暗い空を背景に、木と同じほどの高さの何かが、雨の中で仁王立ちしてこちらを見下ろしていた。