子供の頃育った日本庭園のある日本家屋にいる。
建物の中は微妙に違っていて、部屋がかなり多い。
日没後で庭は暗いのに人々が次々集まってくる。
相続の話があるらしい。
ああ、これは金田一の小説のあの話だ。
連続殺人事件が起きるのだ。
最初の被害者はどういう手口で殺されるんだったっけ。
そうだ、そば粉アレルギーの人をわざと…。
犯行が起こる和室へ行くと挙動不審な男性が立っている。
足元にはハロウィンの旗を繋いだ飾りがある。
これは半間の押入れに挟んであったものだ。
開けて仕掛けをした証拠だ。
最初の犯行を未然に防げば事件は起こらない。
そう思ってこれから起きることを家長らしき人に話す。
すると家長は眼光鋭いやくざ風の男に顎で指示を出す。
次の瞬間、挙動不審の男が庭から銃で撃たれた。
驚いて立ちすくんでいると、横から父が
「ムサシが何をしたか俺は見なかった!」
と言って逃げていく。そうだ、見たと知ったら消される。
とっさに縁の下に転がり込んで身を隠す。
ムサシはこちらを見て気味の悪い笑みを浮かべている。
見えているのか、駆け引きなのかわからない。
ムサシはそこらにある物を拾い上げて銃で撃ち
火をつけて庭の砂利の上に放り投げたりしている。
逃げなければ。逃げなければ殺される。
わたしは縁の下をじりじり移動し、外へ逃げる。
でもどこへ?帰るところも隠れるところもない。
道端でバス停ほどの小屋を見かける。
秘密基地にしていた小屋。でも小さすぎて横になれない。
ひたすら走っていると近所の空き地へ出た。
空き地の小道は空中に続き、異世界へ繋がっている。
緑の草原とのんびりした家々が続き
バスほどもある巨大な小型犬が道の先でじゃれている。
まっすぐ行ったら潰される。でも戻ることは出来ない。
思い切ってまっすぐ進むと3匹の犬が群がってきた。
色はピンクだ。
あっという間に囲まれ、おしくらまんじゅう状態になる。
おおはしゃぎでぴょんぴょん跳ねている犬たち。
しかし犬達はこちらを潰さないよう手加減している。
身体がふわりと浮く。楽しさと安心が押し寄せてくる。
ここにいれば大丈夫だ。
すぐ目の前に異世界の出口がある。
犬と遊んで気が大きくなったわたしは外に出る。
出口には石の階段があり洒落た鉄の門がある。
その先はオープンカフェ風で黄色い煉瓦の通路。
そこに知り合いの白人と、その娘が立っている。
白人には日本人の妻がおり、娘はハーフで日本人顔だ。
「最近お客さんが少ない、どうしたらいいか」
お客さん?多いって言っていたのに。
こちらではずいぶん時間が経っていたらしい。
何があったか話そうと席に着く。
ふと目を上げると不審そうな顔の女性と目が合う。
遺産相続で集まっていた女性だ。この人は敵だ。
まずい、と思った瞬間、先方が口を開く。
「あなた、くたびれはてこさん?」
認めたら殺される、と思う。
「そうみたいです。よく言われます」
「やっぱりそうなの」
「くたびれはてこさんて、どんな人なんですか?」
記憶喪失を装って質問を返す。
内心気が気ではない。相手も半信半疑な様子。
知人親子は不思議そうに様子を見ている。
「くたびれはてこさんは、あなたの22歳のHN」
では異世界にいた間に何年も経っていたのか。
その間わたしはムサシに探されていたのか。
しかし見つかってしまった。
これからどうしよう。
というところで携帯に呼ばれて目が覚めた。
ちなみに22歳のときはインターネッツはなかった。