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オカルト部のことを語る

仕事で部屋を時間で借りた。

当日準備をしようと部屋に入ったとたん、立っていられないくらい気分が悪くなった。
「ああ、ツムツムやりすぎだわ~」と反省しつつ何とか起き上がろうとするがぜんぜんだめ。
すると準備を手伝うためについてきたもちおが突然
「びっくりするほどユートピア!」と叫びだした。
なに??でもちょっとだけ楽になった。あれ・・・コレ系?
そういえば車に乗っている間はどうだったっけ。ここまで具合悪くなかったような気がする。
しかしまもなく一人で人をお迎えしなければならないので、ひとまず部屋の四隅にパンパン柏手を打つ。
「PON!PON!PON!」の勢いで手を叩きまくって仕事。

無事仕事を終えて部屋を出て車に戻ったあと、窓の鍵を閉め忘れたことを思い出した。
でも戻りたくない。部屋に戻るのがものすごくイヤ。もちおの好意に甘えて取ってきてもらった。

(キッドナップ)

ん?

(キッドナップ キッドナップ キッドナップ キッドナップ)

頭の中で意味のわからない言葉が繰り返されている。
キッドナップってなんだろう。子供服ブランドか何かかな。

(キッドナップ キッドナップ キッドナップ キッドナップ キッドナップ キッドナップ キッドナップ キッドナップ キッドナップ キッドナップ キッドナップ キッドナッ)

止めたいのに止まらない。イライラしていたらもちおが戻ってきた。
なんとわたしは仕事道具を一式部屋に忘れていたのだった。
以前ぜったいに一人で戻りたくない場所に財布を忘れ、一人で戻って大変オカルト部案件になったことを思い出してゾッとする。
「とにかく終わってよかった。今日は大宰府に珈琲でも飲みに行くか」という話になり、二人で出かける。

しかし身体のだるさは酷い。食事がまだだし、慣れない仕事だったし、前の晩もいけなかったから仕方がない。
おかしいな、と思うのは、オカルト部案件の真っ最中は
「もしやこれはオカルト部なのでは」という考えがチラッとも浮かばないということだ。
頭の中ではキッドナップが止まらない。ふとスマホで意味を調べてみた。
「誘拐」と出てきてゾッとする。

大宰府へ着いて天満宮の鳥居をくぐったら背中がふっと軽くなった。
境内まで3つの鳥居をくぐったが、くぐるたびに体が楽になる。帰りは平常通りスタスタ歩ける状態だった。
なんだったんじゃろーなーと話しながら、美味しい珈琲を飲んでくつろいで帰った。

その夜のこと。
寝床に着いてからふいに「親切なクムジャさん」っていう映画があったな、と思う。
あれどんな映画なんだろう。面白いのかな。
なんだか急にネタバレ検索がしたくなって起きる。
「親切なクムジャさん」は連続小児誘拐犯を私的に制裁する女性の残酷な話であった。
落ちはない。借りた部屋の周辺でキッドナップが起きていないことを祈るばかりである。
次回の仕事は違う部屋を借りることにする。