「俺さ、子供の頃いじめが辛くってさ、言ったかもしれないけど、何も考えない練習したんだよね。『ムー』とか読んでアジカンとかやって。知ってる?アジアカンって。阿修羅の阿っていう字を墨で半紙に書いて、壁に、白い壁だといいんだけどさ。壁に張るんだよ。そんでそれをじーっとみんの。何にも考えないでじーっと。そうすると字の周りの壁がどんどんどんどん白さを増して来てさ、字も黒いところと白いところがだんだんぜんぶ白く見えてきて、なーんも考えなくなってくるんだよね。まあ、そうしろって書いてるからそうしてるんだけど、ほんとにそうなって来るんだよ。俺、いろいろ辛かったんだよね。思い出しちゃってさ。そりゃ親から虐待されたとか、本当に辛い目に遭った人からみたら、ぜんぜんたいしたことないのかもしんないけど、子供の頃の俺は本当に辛かったんだよ。だからもう何も考えたくない、思い出したくないって思いながら毎日過ごしてたの。そしたら本当になんにも考えないようになって。まあ才能もあったんだと思うけど。今はその才能が、憎い!」
「何の話だっけ」
「なんだっけ」
「『ドンマイ』がDon't mindだって話だったよね」
「あ、そうそう。それで俺いまかなりドンマイだなって思って、あのころのことを思い出したんだ」
今月家計が厳しいけど元気出していこう、という話をしている最中の出来事でした。