わたしは自分がアスペルガー症候群当事者だということには何ら抵抗はない。自分を構成する要素、人種、国籍、血液型とか、出身地とか、そういうもののひとつで、そのことについて考えたり話したりするのは悪い気分じゃない。少数民族だけど、あったんだ、自分の部族が。滅んでなかったんだ。ずっと寂しかったよ、って感じ。テンプル・グランディンさんと同じとか誇らしい。
でも、自分がそうだと知ったとき「大切な人以外には言わない方がいい」と精神科医から言われた意味がだんだんに分かってきた。こちらがアスペルガー症候群だと知ったとたんに下に見てくる人、こちらの判断力や思考力を侮ったり、「自分は世間を教えてやる側」という上から目線の態度に変わる人が後を絶たないからだ。
「このひと仲間かもな」と思うことがある。口にすることもある。わたしがアスペルガー症候群当事者と知ったうえで、共通の知人がアスぺ仲間じゃないかと思うと言ったことに対して「人を差別する行為だ、診断だ、相手を精神病だというようなものだ」と圧倒的な善意から長文メールを寄越した人がいた。この人はわたしの属性が差別対象であると断言していることに気が付いていないし、疑問を持っていない。