寿司屋のカウンターで、一眼レフを構える若い男性が隣にいた。
「ここは撮影所じゃねえぞ、寿司屋なんだ!」
「ア・・・スミマセン」
シーーーーーーン
テーブル席でひそひそ話す妻と娘ら。
(あー。あっちの人たちみんな黙っちゃったよ)
(なんだかなー)
数分後。
「そうか、山か。ダイビングじゃないのか」
「は、はい」
「ふーん。で、マニラには・・・」
「乗り換えで、福岡空港から・・・」
(なんか喋ってるよ)
(ほっとしてるね、あの人。他の人たちも和んでるわ)
(上手いよね、飴と鞭が)
(ツンデレ?)
さらに数分後。
「赤貝」
(赤貝奢ってる)
(酒すすめてたし、払いも持つんじゃないの)
(ありゃー明日蕎麦屋に連れて行く話になりかねない)
(むしろ今晩泊まってけっていい出すかも)
(冗談じゃないわよ、誰が支度するのよ)←妻
帰り際。
「ごちそうさまでした、ありがとうございました」
(すっかりいい人だと思っちゃってる顔だよ)
(ヤクザだな。ヤクザの手口を見た)
(上手いよなー)
(勉強になるわー)
「ほんと美味いね」←娘婿
「ウマーよねー」←妻
こっちは別のものを上手いと思ったわー。